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うぐいす徳利

(2009/07/03)

・この「うぐいす徳利」は水笛の原理を応用した酒器で、「笛徳利」の一種です(「笛徳利」の基本的な仕組みについてはこちら)。「笛徳利」をさらに工夫して、内部構造を縦に二分割(底部で連結)し、注ぐ時の水位変化による複雑な空気の出入りを利用して、うぐいす型の笛を鳴らす様ですね。東海地方で造られていたものらしく、右端は名古屋陶磁器会館に保存されている骨董品です。超派手ですね。お酒を注ぐ時に「ホー、ホケキョッ」と鳴かすまでには熟練の技を身につけねばなりません。この音を「けろけろぽー」と表現した岡本かの子女史(岡本太郎のお母さんですよ)の言語感覚は素晴らしいと思います。 まぁ、ゆらゆら振ると「ピ〜ピヨ、ピッ、ピヨッ」って云うだけでも顔が綻ほころびますけど。中右は「うぐいす盃」とか「笛盃」と呼ばれ、飲む時に吸うとピーと鳴る様になっていて、鳥寄せ笛の様な音がします。

・想像ですが、徳利の形がワザワザ六角になっているのは、外に持ち出す時を考えての事ではないでしょうか?今まで見た骨董品は、必ず派手で六角形なんです。何本も運ぶ時に入れ物の中でガタツキずらい形ですよね。春の暖かくなった頃に外で花見でもしながら、鳥を呼んだり、鳥達と鳴き遊びする為の風流アイテムだったのでは?と思いました。派手な彩色がほとんどなのも、ハレの場でもある花見の宴のためと考えると納得がいくのですが、いかがでしょうか?

      
左三点が当店にあるレプリカ品。骨董品は全部ド派手で、写真のヤツなんか割と地味な方です。

憧れのチロリ

(2009/06/23)

・以前から恋焦がれていたチロリについてです。「地炉利」とか「千呂利」「銚釐」と書き、本来は燗をつける為の注ぎ口と取っ手が付いた筒形器でした。熱伝道性の良さから錫すずや銀、銅で出来ていたそうで、いわゆる酒タンポ(下)です。これがタンポ/チロリ類の基本形と思われます。タンポは「湯婆」と書くそうで、チロリとは地域違いのほぼ同義語です。大阪を境に東がタンポ、西がチロリだった様ですね。一方、焼酎文化圏の九州には、ガラ(熊本・球磨)、カラカラー(沖縄)、チョカ(鹿児島)、など独特の燗酒器が地域ごとに存在します。それぞれの形状が明らかに異なっていて、文化・技術や美意識の違いが楽しいです。


いわゆる酒タンポ達です。アルミ、錫、銅と値段差がスゴイ・・

タンポ/たんぽ【湯婆】
(1)京阪地方で、銅または真鍮製の酒をあたためる筒形の器を指す。
(2)《方言》酒の燗をつける徳利。(青森、岩手、宮城、秋田、福井)
(3)《方言》酒の燗をつける金属製の器。(大阪、和歌山、徳島)(日本国語大辞典)

・唐から伝わったアノ暖房器具からの名由来で、「湯婆」をタンンポと読むのは唐音という読み方です。「婆」とは「妻」の意味で、その代わりに抱いて暖を取ることを意味しているとか・・・・「湯婆」のみで湯たんぽの意ですが、そのままでは通じないために日本に入ってから「湯」が付け加えられたそうです。陶器製湯タンポが金属製に替わったのは大正期以降だそうで、金属製は酒タンポの方が先だったんでしょうか?

チロリ/ちろり【銚釐/地炉利/千呂利】
(1)酒を暖めるのに用いる金属製の容器。円筒形で注ぎ口と把手がついたもの。
(2)《方言》酒の燗をつける金属製の器。(滋賀、大阪、愛媛)(日本国語大辞典)
(3)《方言》酒を暖めるのに用いる銅・真鍮または錫製の容器。(広辞苑)
(4)徳川時代以降ちろりを用いて燗をしてから銚子に移し変えるようになった。(灘の酒用語集)

・語源は囲炉裏(いろり)がなまったと言われており、“ちろり”と短時間に暖まるからとか、酒好きの方が待ちきれず舌をチロリと出すからとも云われています。


囲炉裏の灰に埋めて暖める磁器チロリ

・いつの頃からかチロリという名称の方は用途が変わり、ある種の卓上酒器を指す事が多い様です。今では急須型のガラス製チロリを多く見かけ、主に冷酒用に使われます。はとんどの人はこちらが思い浮かぶかもしれません。昔のヤツを復刻したレプリカは激かわいい!です。今物なら長崎ビードロも素敵ですが、実用性無視の美術工芸品と化しています(下左)。新作のチロリは中途半端なレトロもどきで好みのモノは皆無です。モダン・レトロと言う札が付いた品には良いモノはマズ無い!作家物などは自意識過剰の作品指向で話になりません。さりげなさこそ得がたい美しさなのに・・骨董品で探してもガラス・チロリはほとんど見かけず、たまにあっても話にならない値が付いてます。ガラス骨董は生存率が少ないので仕方が無いんですかね。

    
噂の長崎ビードロ(左)。洒落にならない値の極端な例、¥1,995,000の薩摩切子の復元チロリ (中、右)

・どちらにしろ気になるモノは手が出せない程の高額品がほとんどで、諦めアイテム殿堂入りでした。いくら欲しくて5000円くらいが限界なんです。お店で使いたいから・・唯一の候補として独自の発展をとげた佐賀の肥前ビードロ(下)になら手頃なモノ(3000円台)がありますが、赤や青の濃い色のガラスで一本目には存在感が強すぎるかと思い踏みとどまっていました(3)。猪口を合わせるのも難しそうだし・・でもでも、ついに骨董屋さんで見つけました。しかも同時に二品を違うお店にて超ラッキー・ゲットですよ。


肥前びーどろ。ロックオンです。

(1)のガラス・チロリ(明治期)なんか2000円というオドロキ価格!一桁違うか?と目を疑いました。ついに夢にまで見たガラス・チロリが我が元に・・・・しかも、注ぎ口が付いてる珍しい燗瓶タイプです。骨董品ではフラスコ型しか見た事無〜い・・細川さん、ありがとう!

(2)の錫チロリ(昭和初期)も不思議な程のバカ安で(かわいくもない)現行錫チロリの1/5以下の値段だなんて、ウ〜ン、マンダム!です浅見さん。しかも錫製の急須型は珍しいかも?1714年から270余年続き、平成6年に惜しまれつつ廃業した錫器の名門、錫半(錫屋半兵衛)さんの品です。 弘化3年(1846)の一流品情報誌『浪花買物独案内』にも紹介されていて、錫新(錫屋新兵衛)と並ぶ名産地関西の二大巨頭でした。

1)2)3)
こちらは入荷品。両方とも、ちんまりとカワイらしい一合用です。(3)は錫屋半兵衛の底刻印

・錫 の分子は不純物を吸収する性質があり 水を浄化すると云われています。それに加え、錫は金に次いでイオン効果が大きいため浄化作用をさらに促進します。錫の花瓶で草花が長持ちする事は良く知られていますね。これと同じ理由で錫の酒器は酒の味を驚くほどまろやかにします。昔から、これらの事は重要な慶事(めでたい事)として扱われたため、錫器と宮中の関わりは大層深く、正倉院の御物にも錫器が多数納められています。宮中三殿のお神酒徳利は錫製を使用しており、お神酒は錫製のお銚子でお召し上がりになられます。現在も宮中ではお酒のことを“おすず”と呼ぶそうです。

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冷酒(越乃寒梅)用の酒器

・ヒヤを合量りで御注文のお客様用に、骨董店で見つけたガラス徳利を数種類用意いたしまた。たいそうカワイイ酒器達で、一味上がった気がするのは不思議です。お試し下さい。

・<梅にウグイス>、<雪富士に松>、<擦り絵・もみじ>、<盛ミゾ首>、<格子紋>の五品で、明治〜大正期の品々です。半年がかりで探しました。お金に糸目を付けなければ苦労はなかったんですが・・・なにより私自身の達成感で大満足って感じです。でも想ってる感じの猪口が見つからないんですよね・・・

・・・と思いきや、ガラス猪口がキターッ!徳利でお世話になった福井県の古民芸屋さんが見つけて下さいました。大正初期の品で、<鷺サギに月・しだれ藤>のエナメル手書きが5客です。寒い時期なのか、鷺が羽をふくらまして自己ダウン・ジャケット化している様が見事に描かれています。やや小ぶりながら、妄想通りのカワイらしさが鳥肌嬉しくてウキウキ・ウッキーで〜す。ダメモトでも御願いしてみるもんで、「人間、あきらめが肝心」じゃない時もあるんですね・・


ガラス猪口の二弾目は大正の<草花文様切り・金縁底>です。(2009/6/26)


最近(2009/6/21)入手したガラス徳利です。注ぎ口から底にまで息筋(空気の線)が走っているナイス不良品!

燗酒(越乃寒梅)用の酒器

・お燗はチョイ・デブの<青ひょうたん>か下の<赤兎>でお出ししています。<赤兎>は明治〜大正期の九谷で、あまりのカワイさに一目惚れでした。残念ながら揃いの猪口を逃してしまい、バラ猪口にてのご提供が悔やまれます。ウサギに会いたい方は「お燗を<赤兎>で・・」とお申し付け下さい。

  

・入手先の骨董店主、細川さんの紹介文です。

「中国の赤絵を模した九谷の美しい徳利です。草花が取り巻くウサギが大きく二羽描かれた絵付けは金彩と相まって非常に好もしい図柄となっていますね。肩部のヨウラク、はたまた鏡の様な模様は古代柄。その上に描かれた霊芝も長寿のしるしとしてお目出度いですね。ウサギの足元に綺麗な黄色をおいたところもアクセント。蓋には可愛い花紋と、九谷としてはあまり見ない仕上がりで、優雅さの中に少々モダンさを秘めた珍品の美しいお品に仕上がっています。」

・<青ひょうたん>と言えば、どこかで馴染みの懐かしさを感じて????でしたが、漱石の「坊ちゃん」を思い出してハタと手を打ちました。小説中では<うらなり>君という英語教師がマドンナの婚約者でしたね。「うらなりの青ひょうたん・・・」的な記述があったような気がします。当店の<青ひょうたん>は、ちょっと太めで全然弱々しい感じではありませんけど・・・「個人的には坊ちゃんの様な人は友達にしたくない」という読書感想文を書いた事があります。身近にいたらウザそうな人物じゃないですか?

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